民藝を訪ねて

日々の暮らしの中であたりまえにある、誰かが作ったであろう器や布や家具。機械で作られたのではなく、人の手で作り出された『民藝』という名のものたちは、ひっそりと、でも何かを言いたげに。柳宗悦らが提唱した『民藝』を現代の時代性にアップデートあるいはチューニングするために、作り手は何を考え、どうアプローチしているのか。そして、新たに生まれる「変化」にどう向き合うのか。

民藝の作り手として活躍する人々の「暮らし」に対する思いや、制作についての考え方にフォーカスし、作り手であると同時に生活者として、ものづくりに携わる姿を追います。

第一回 備中和紙
備中和紙
丹下 直樹
TANGE Naoki
備中和紙 丹下直樹
対談
プロフィール
おかやま住宅工房 中川大
おかやま住宅工房
中川 大
NAKAGAWA Futoshi

02 見せ方が下手なんです。

中川
中川 以前、民藝の話で倉敷ノッティングが話題になった時、倉敷民藝館の初代館長だった外村先生の名前が出て、個人的なことなんですけど、大学の大先輩で、民藝に興味を持ったんです。
ご縁があるのかなと。
倉敷ノッティングは手織りの椅子敷ですよね。
今の感覚からしても、その柄はモダンな印象があります。
丹下さんがノッティングのプロモーションをされたそうですね。
丹下
丹下 展示会のDMやポスターのお手伝いをしました。
今は研究所のリーフレットを作ろうとしてます。
美観地区にある旅館の女将さんが外国からの宿泊客を連れて研究所に見学に来るのですが、そういう時に役立つものです。
でも結構ダメ出しをされます(笑)。
中川
中川 丹下さんのデザインがダメ出しされるんですか!?

丹下さんがデザイン監修しているリーフレット

丹下
丹下 DM等に限らず、祖父もぼくも新しいものができたら研究所や外村先生に持って行って見せてました。
何が良くて何が悪いかお互いに意見を言ってきた関係だから、「これは、なしですね」とはっきり言うんですよ。
中川
中川 おじいさんの代からのお付き合いなんですね。
丹下
丹下 ぼくは、「ぼくでできることなら何でもやりますよ」というタイプなので。
このあいだは、装丁の仕事もしたんです。
研究所が教科書代わりに使ってる柳宗悦の民藝の考え方が紹介された古い本で、一年かけて叩き込まれるんです。
これの文庫本の表紙をはがして、自分たちで作った布でハードカバーを作る。
授業をきっかけに、本の装丁を発展させたファイルとか、御朱印帳が作りたいというので、それもいいんじゃないかと言ってます。
中川
中川 そうやって紙を漉く以外のこともされているわけですけど、年に一回は新しいことに挑戦しようとか、決めているんですか?
今のままでも十分だと思うけど、もう一つ高みに行こうということでしょう?
丹下
丹下 ん~、毎日最初に戻ってるだけかもしれない。
何もかも表裏一体。
二面性があると思うんですよ。
でも、二面性だけだと、ちょっと足りないんじゃないかと思ってます。
民藝に限らないですけど、手仕事でものを作ってる人は、たぶん機械で作るよりも正確なものが作りたいと思ってるはず。
一方で、緩いのは緩い。
いくら繰り返しの仕事でも、毎回ちょっとずつ違う。
機械の正確さと手仕事の正確さって全然別のものだと思うんです。
手仕事の場合、必ずその正確さも緩さも一体で、そういうものだから、いいんじゃないかな。
機械で完璧に作るよりも魅力があるんじゃないかと思います。

その魅力をどうやって伝えるかも、今考え始めているということですよね。
丹下
丹下 民藝の人は、「やってます」と言うのが、恥ずかしいところがある。
せっかくみんないい仕事してるんだけど、紹介の仕方が下手というか・・・。
近くにあるノッティングの研究所なり、作り手の仲間なりと連携して、民藝のキーワードでつながってるんだけど、もう一つ、違う切り口がないのかなと考えているところです。
中川
中川 丹下さんは漉いた紙でいろんな商品を作られていますよね。
丹下
丹下 例えば封筒なんかは、強い大きい紙を作ってガチャッと型で抜いて、機械で貼ってくれる所に出すんですけど、自分で切って糊して貼るという仕事は、一度に機械で大量に作る今の時代の流れからしたら、それはそれで価値があると思うんですよ。
それに向いた紙をわざわざ漉いて作ると、違う魅力のものができるし。
基本は自分のいつもの仕事と変わってないけど、「この封筒、本当に手で切って糊して作ってますよ」というのは、結構いいんじゃないかと思う。
中川
中川 そこに共感してくれる方も増えてきてるように思います。
丹下
丹下 手仕事だから、そんなの当たり前じゃんて思うかもしれないですけど、紹介の仕方がちょっと違うだけで、よりいいものになるし、「価値があるよ」と紹介する方法があると思うんですよ。
思いの伝え方がみんな下手なんです、ぼくも含めて。
そのあたりの切り口をDMとかを作りながら探してるんです。
何かキーワードが見つけられれば、作り手の仕事全体がよくなるはずで、それも多分ぼくの仕事だと思うんです。
【つづきます】

民藝とは
「民藝」とは「民衆的工藝」のことで、大正時代末期に思想家・柳宗悦(やなぎ むねよし)氏らによって提唱された。1936年には東京・駒場に日本民藝館を創立し、柳氏が初代館長に就任。
その後も、機能的な美しさを備えた日々の暮らしの道具を保存し、普及、発展させる運動は広まり、全国に民藝館が設立されていった。
外村吉之介(とのむら きちのすけ 1898~1993年)
「民藝」とは「民衆的工藝」のことで、大正時代末期に思想家・柳宗悦(やなぎ むねよし)氏らによって提唱された。1936年には東京・駒場に日本民藝館を創立し、柳氏が初代館長に就任。
その後も、機能的な美しさを備えた日々の暮らしの道具を保存し、普及、発展させる運動は広まり、全国に民藝館が設立されていった。
倉敷本染手織研究所
1953年に倉敷民藝館付属工藝研究所として、外村吉之介氏が設立。作家の養成や趣味の染織のためではなく、「暮らしの中で働く健康でいばらない美しさを備えた布」の織り手を育成する。
一年かけて、民藝の考え方や手織、手紡ぎ、本染の技術を学ぶ。「倉敷ノッティング」は羊毛糸で作る敷物で、現代にもマッチする柄は外村氏考案のものをベースとしている。

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